保険に加入する理由は様々だと思いますが、中には「建設現場の仕事なので、作業中の事故が心配で保険に入りたい」と思う方もいらっしゃると思います。しかし、雇用されている従業員の場合、業務が原因の病気やケガの場合は、労災保険から必要な治療費や休業保障、遺族保障などが支給されるということを知っておいた方が良いです。
◆労災保険とは?
労災保険は、一人でも労働者を雇っている事業主には加入が義務付けられ、保険料は全額事業主が負担します。会社員や自営業者に雇われている方は、必ず加入している保険です。
中小事業主や自営業者などは、原則として労災保険の適用はないですが、特別加入という方法で任意加入できる場合があります。
では、実際にいくら支払われるかということを、「会社員Aさん、40歳、月収30万円、年間ボーナス合計100万円」が仕事中にケガをした場合で考えてみましょう。
◆療養保障給付
仕事が原因のケガの場合には、検査費用、入院費用、手術費用、薬代など、ケガが治るまでの医療費はすべて無料になります。
◆休業保障給付
ケガの治療中に働けず、仕事を休んだ場合には、欠勤して通算4日目から休業保障給付が支給されます。支給される金額(給付基礎日額)は労災発生日以前3ヶ月の賃金総額(月給、通勤手当、家族手当など)を総日数で割ったものの60%です。そして、20%の特別支給金が加算され、休業保障給付は合計80%になります。
◆実際の金額
Aさんは、月収30万円なので、日額に直すと一日1万円。給付基礎日額は1万円なので、ケガで30日仕事を休んだとすると、休業保障給付は
1万円 × 30日 × 80% =24万円
となります。
◆障害が残った場合
障害が残った場合には、「障害保障給付」が支給されます。障害保障給付は障害の程度に応じて、年金または一時金で支給されます。
◆亡くなった場合
もし、業務上の事故で亡くなった場合には、「遺族保障給付」が支給されることになります。遺族の範囲(配偶者、子どもなど)により、年金または一時金で支給されます。年金額は遺族の数によって決まります。
先ほどのAさん(月収30万円、ボーナス年額100万円)の夫に妻と子ども(妻40歳、子ども10歳と7歳)がいる場合、
・遺族補償年金 年額2,230,000円
・遺族特別年金 年額446,000円
で合計267万6,000円を受け取ることができ、さらに一時金で「遺族特別支給金」を300万円受け取ることができます。
◆その他の給付
他に、葬式費用として「葬祭料」、長期療養した場合には「傷病保障年金」、介護を必要とする場合には「介護補償給付」が支給されます。
◆労災隠しに注意
事業主は労災を嫌います。労災が発覚すると業務改善が必要になり、それにより業務が中断し損害を被る場合があるときには、なるべく報告したくないのです。
しかし、事業主は労災事故で労働者が死傷した場合、労働基準監督署長への報告が義務付けられています。雇用主がしぶるようでしたら、労働基準監督署へ相談しましょう。本人ではなくても、家族からの相談でも受け付けてくれます。
労災保険の内容を知っておけば、不必要な保険に入る必要が減りますので、覚えておきましょう。